■1996〜1997
1996年10月9日、北海道テレビ放送(以下HTB)で小さな深夜番組がスタートした。出演者は、北海道の劇団「オーパーツ」を主宰しテレビで活躍していた鈴井貴之と、北海学園大学の学生でテレビのリポーターなどをしていた大泉洋。そしてチーフ・ディレクターの藤村忠寿とディレクター兼カメラマンの嬉野雅道の4人。
彼らは20万円ほどの家庭用デジタルカメラを片手に旅をした。 もちろんローカル局の深夜番組に、たいした予算などない。しかし「まとめて金を使い何ヶ月も放送する」という方法で、前借りした予算を握って日本全国を深夜バスや原付で周り、世界各地に出かけた。
行き当たりばったりで時間も金もない旅を繰り返す4人。放送された番組には各地の風景や名物、視聴者の涙を誘う出会いや感動など今までの旅番組に不可欠といわれていた要素は何もなかった。彼らが持っていたカメラに残っていたのは移動中の車内やホテルの中。そして喧嘩をし互いを罵り合い、ぼやく姿。
それでも彼らは旅を続けた。
あるときはサイコロキャラメルを振って日本各地を回った。またあるときは原付に乗ってゴールを目指した。マレーシアのジャングルで猛獣に襲われ、幻の鳥を追ってコスタリカに出かけた。テレビ局の駐車場で勝手にパーティーをひらき、泥酔したあげく生放送番組に乱入した。ヨーロッパ制覇に挑戦し、四国八十八カ所巡りで怪奇現象に遭遇した。
大泉は藤村を「カブトムシ」と罵り、藤村は大泉を「鈴虫」と嘲った。深夜バスで鈴井がうなされ、ラスベガスのホテルでわずかな金を巡って嬉野が激怒した。4人は数え切れないほどケンカをし、そして数え切れないほど笑った。
■1998〜2001
1998年、テレビ朝日系列局が自社制作した番組を持ち寄う「自社制作番組研究会」にて、全国から集まった各局社員の前で「水曜どうでしょう」が上映された。その面白さと常識はずれのメチャクチャさに衝撃を受けた秋田朝日放送の佐藤宣明がHTB編成局に相談した結果、1999年8月6日に秋田朝日放送で水曜どうでしょうの再放送番組である「どうでしょうリターンズ」の放送が開始される。
そしてわずか2ヶ月後には宮城県の東日本放送も放送を開始。ここにローカル局制作のバラエティ番組が、キー局を介さず同系列のローカル局で再放送されるという前代未聞の事態が発生する。
水曜どうでしょうに注目したのはテレビ局だけではなかった。
確実に水曜どうでしょうは視聴者の注目を集めていった。
1999年12月8日に放送された『欧州リベンジ 〜美しき国々の人間破壊〜 最終夜』にて、水曜どうでしょうは深夜番組としては異例の最高視聴率18.6%を記録。この事件は業界だけでなく一般の視聴者にも衝撃
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を与え、「北海道にすごい番組があるらしい」という噂がネットや口コミで全国に広がり始める。
2002年2月、インターネット放送の草分けであるインプレスTVで有料配信が開始。一ヶ月で配信数が1位となり、同年12月には番組購入件数が延べ10,000件を超える。
人気番組となった水曜どうでしょうは、その後も旅を続けた。全国各地のローカル局で「どうでしょうリターンズ」の放送が始まった。深夜に流れるわけのわからない番組に出会った視聴者は驚き、気がつけば番組の虜になっていた。HTBを見学する若者が増え、オープニングのロケに利用する小さな公園で写真撮影をする者が続出した。静かに、そして確実に波は広がっていた。
■2002〜
2002年7月24日、「屋久島24時間 耐久魚取り」の放送中に鈴井が視聴者に向けて一つの発表をする。それは次回の企画を最後に、水曜どうでしょうをいったん休止するというものだった。人気番組の突然の休止発表に驚く視聴者に向かって、鈴井はこう続けた。
「私たちは一生『どうでしょう』することに決めました」
年に1〜2回の不定期な形になるが、出演者とスタッフ4人の誰かが死ぬまで番組は続け、一生水曜どうでしょうをやる、と宣言する鈴井。それは新しい挑戦の始まりだった。
そして番組は休止する。 しかしそれは新たなスタートだった。
2003年3月に発売されたDVD第一弾 『原付ベトナム横断1800km』が、5万枚以上を売り上げオリコンDVD週間ランキングで初登場5位。そして7月に発売されたDVD第二弾
『サイコロ1 粗大ゴミで家を作ろう 闘痔の旅』は、予約時点で5万枚を超えオリコンのDVD週間ランキングで初登場2位となり、再発されたDVD第一弾も8位にランクインする。
高視聴率の地方制作番組はいくつかあり、全国放送されているものも存在する。しかし全国的には無名のローカルタレントが出演する地方局制作のテレビ番組が、放送終了後に再放送され全国でファンを増やし続けている例は他にない。
きれいな風景も美味しい食べ物もなく、男たちが喧嘩しあっているが、見る者を捕らえて離さない圧倒的な魅力を持つ不思議な番組。それが水曜どうでしょうである。
2004年11月 文責:syu@管理人
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